兵庫RC(ランニングクラブ)

小学生から大人まで幅広い層のチームでの様々な連絡や報告、そして私の考え方や理論を上げて行きます。

奇跡のレッスン 陸上競技 長距離編を視聴して。

NHK BSで放送された奇跡のレッスン 陸上競技 長距離編を見逃したので、チームのメンバーの方からブルーレイをお借りして、視聴させて頂きました。その感想を私なりに辛口で述べたいと思います。

まず、この内容は東京都内のごく普通の公立中学校にイタリアの伝説の指導者レナート・カノーバ氏が1週間指導をして、その中学生の子供達がどう変わっていくのかを最終日の東京都中学駅伝の結果を通して考える的な内容です。

レナート・カノーバ氏はオリンピック金メダリストのボルディンを始め、メダリストを数多く排出した伝説の指導者です。私も最初はピンと来ませんでしたが、よく見るYouTubeケニアの練習で拝見する指導者の一人だと分かりました。

さて、この方の指導方法、スピード練習に特化したトレーニング方法です。今回の場合、トレーニング期間が1週間と短かった事もあり、スピード練習に特化していたのかも知れません。しかし、1週間の内の1日以外がスピード練習と言うのは、まず問題であります。

もし、このメニューを中学校の指導者が鵜呑みにして真剣に取り組んで続けていますと、まず子供達は故障や貧血を起こすでしょう。それ位、体に負荷の高い内容となっています。

まず初日の1000m×3本のインターバル、それ自体は通常でも行うトレーニングメニューです。しかし、問題なのはそのメニューをアスファルトの上で行っていた事です。これは、NGです。特に成長期の中学生にはNGです。何故なら、着地への衝撃が強く足への負担が高いからです。

翌日は芝生の丘での動き作りを含めた回復のトレーニング。この回復は本当に大切なトレーニングです。何故ならトレーニングをすれば強くなると人は勘違いしがちですが、実はトレーニングで自分の体を痛めつけて、その痛めつけた体を回復させる。超回復と言うのですが、それをする事でトレーニングを行う前より体が少し強くなる訳なのです。それも完全に体を動かさず休むよりも積極的休養と言って、体を軽く動かしてほぐす方が回復は早いのです。

この日は、フォアフット走法(つま先着地)をかなり進めていました。そのトレーニングと言える(?)動き作りも。理屈は正しいです。フォアフットで走る方が接地時間も短くピッチが早くなり、またアキレス腱が突っ張るので、筋肉の弾性を利用し地面からの反発を大きく受け、ストライドを伸ばしやすいのです。確かに理想はそうですが、それは東アフリカの人々は骨盤が前傾しており、着地時が体の真下に着きやすいので、つま先でごく自然に着地出来るのです。しかし、日本人の大半の骨盤は後傾しております(腰が丸い)。つまり、自然体ならば着地が真下より少し前になっちゃう訳です。なので、カカトから入り、つま先に体の重心を移動して抜ける方が自然体なのは自然体なのです。なので、体への特に腰への負担が掛かる恐れを考えると、軽々しくはフォアフットを勧める事はできません。それと、あの動き作りに関しては理論上ではなく経験上だけのもののように思えます。私には意味が分かりませんから…。

さて、その翌日からはほぼスピード練習。200mのインターバルやら、坂ダッシュやら。回復期間はなし。映像上時間内におさめる為に、目新しくない所をカットした結果からそう言った形になってしまったのだとは思いますが、映像上だけを信じてしまうと、超回復を知らない疑問を感じる指導者となってしまいます。

ここは、絶対に鵜呑みにしてはならない所です。

また細かい所で言うと、長距離の95%は遅筋を使い、残りの5%は速筋を使う。なので、いかに速筋もシッカリ使って筋肉を100%使えるかが重要だとおっしゃっていました。

確かに私もその通りだと思います。しかし、速筋にも種類があります。FG繊維と言われる純正の速筋では、全力で1分程度しか持ちません。なので、いかにFOG繊維と言われる遅筋の性質を備わった速筋に変えて尚且つそれを鍛えるか、それが私の速筋の鍛え方の鍵だと思っています。

その為のトレーニングが、200mのインターバルや70m位の坂ダッシュで正しいのかどうか、私も分かりませんが疑問です。

ただ、今回の中学生の子供達にかけるメンタル的な言葉、それは間違いなく正しい言葉です。どんな内容ですかって、いつも私が言っているような言葉です(笑)

今回の感想は、あくまで私の視点であって、指導者によっては間違いなく様々な意見が出るかと思います。それだけ、トレーニング理論は確立されていないと言う訳です。

一つの考えとして、今回とても勉強になりました。視聴出来て良かったです♪