兵庫RC(ランニングクラブ)

小学生から大人まで幅広い層のチームでの様々な連絡や報告、そして私の考え方や理論を上げて行きます。

効率良く成長を通じて長距離の競技力を高めるには

私が見る限り、日本の長距離競技者はその場その場で速くなる事だけを考え、いかに効率良く最終到達地を高くするかを考えて過程を大事にし、トレーニングを進めている方はほとんどいないだろう。ましてや、指導者もほとんどがそのような考えを持って指導されていない。環境はともかく、世界と日本の差が広がっているのはそんな所も大きいのではないでしょうか。そう考える理由は、一つは生理学的な身体の仕組みを学び理解している指導者が少ない事だ。理解していたとしても、小·中·高·大·社会人と縦割りに別々の指導者が存在し、その一部のパーツで名声や地位を守る事に重視し、アスリートファーストでない指導に徹してしまっている事だ。もう一つは、小学生と言う少ない競技者だとトレーニングの成果が現れやすいので躍起になってスピードトレーニングをガンガン行って、後に伸びなくなって才能があった子の芽を摘む指導者がひっきりなしに出没する事だ。日本陸連自体も悪いのだが、ここでは置いておく事にしましょう。

さて本題ですが、私は人間の能力は足し算ではなく引き算だと考えています。この世に生まれた時点で人の能力の最大はそれぞれ決まっていると考えています。それをいかに引きを少なくして最大限に持って来れた方々が、トップアスリートととして君臨しているのだと私は思っています。その為には、いかに成長に沿った効率の良いトレーニングを進めるかがとても重要だと考えています。その考えを表したのが、下記の通りである。

①ゴールデンエイジ(約6歳~12歳)

この時期で神経系の発達の大方が形成される。要するに運動神経の良し悪しはここで決まる。ですから、最優先で行うべき事はよく体を動かす。様々な動きを行う。一番良いのは、よく遊ぶ事である。逆に、過度なスピードトレーニングは絶対に避けるべきである。この時期の子供達は骨や関節が柔らかく弱い。過度なスピードトレーニングは、足回りの骨や関節を痛めやすく、そして最悪な場合にはその部分の変形による影響を競技人生最後まで影響するからだ。

②成長期(約13歳~18歳)

この時期は心と体が急激に変化する時期です。ここで一番優先すべきトレーニングは、有酸素能力を高めるトレーニングです。つまり、jog系のトレーニングである。この時期が有酸素能力を大きく伸ばす事ができる。その理由は、次の通りである。有酸素能力を高めるのに、一つには有酸素エネルギーを作る量を増やす事にある。それに必要なのが、体内に取り込む酸素です。毛細血管が伸ばせれば、酸素を取り込む量が増え、エネルギー量が増え、有酸素能力が高まる。成長期は骨や筋肉だけでなく体内の血管も伸びる。身長が伸びるだけで長距離種目の記録が縮まる理由の一つがそれである。その毛細血管を成長時期に伸ばすのと、体の成長が止まってから伸ばすのでは、かかる労力も成長が止まってからの方がかかりますし、伸びる度合いも体の成長が止まってからの方が低い。そう言った事から、有酸素能力は成長期により中心となって磨かなければいけないのである。そして、スピードトレーニングについてはまだ体がしっかりしていないので過度は禁物ですが、この時期を過ぎてからですと最終到達までスピードを開発し損なう可能性もあるので、行う側の判断も難しいのですが、許容範囲内でのスピードトレーニングは入れるべきだと考えています。ただし、本当にこの時期は体が強い訳ではありません。簡単に疲労骨折や靭帯炎、筋断裂を引き起こし、それが①の時期同様に後遺症やバランスが崩れて戻せなくなる事もあるので注意が必要である。

③身体の安定期(19歳~24歳)

この時期は体の成長がほぼ止まり一番体が安定した時期になる。ここで行うべき中心となるトレーニングは、間違いなくスピードトレーニングだ。何故ならここを逃せば年々スピードを付ける事が出来なくなり、逆に徐々に下降線を辿っていく。距離トレーニング重視よりは、スピードトレーニングを重視。無理して両方を同時進行で伸ばそうと考えれば疲労回復が追い付かずオーバーワークとなり故障を引き起こすので注意してください。トラック競技は一番長くて10000mです。マラソンを走るならともかく、世界のトップランナーでない限り700km以上走る必要性はないはずです。逆にここでスピードを磨ききれなければ、スピード絶対値が決まってしまい、それ以降の競技力向上に限界が見えてくるのである。現状の日本はこの状態だろう。

④身体の下降期(25歳~)

この時期から世界でマラソンに移行される方が多くなるのは、一つはスピードに下降を感じるからでしょう。もう一つは、今までの過程をこなしスピードに円熟味を満たしたと言う事で距離を伸ばし、長距離としての最終種目マラソンを目指せると確信したからであろう。そう、ここで重要なのは距離を伸ばしたトレーニングである。私の考え通りであれば、すでに下地は出来ています。あとは最終形態に持ち込む体を作るだけである。

人の最大能力はそれぞれ違い、能力差と言うものは確かにあるでしょう。ただし、最大能力まで到達出来た人間はほぼいないだろう。誰しもが成長の過程の中で能力を削っていきます。そうであれば、トップを目指したいならば、成長に則したこう言う私の考えでトレーニングを進めるのは行ってみる価値はあるのではないか。