近年の日本の長距離会は一見好記録が続出して良い方向に見える。しかし、世界も同じように伸びており、一概にそうとは言いきれない。
5000m男子
日本記録 :大迫 傑 13分8秒40(2015年)
世界記録:ジョシュア チェプテゲイ 12分35秒96(2020年) 1秒99更新
その差32秒44
5000m女子
日本記録:福士 加代子 14分53秒22(2005年)
世界記録:レテセンベト ギデイ 14分6秒65(2020年) 4秒50更新
その差46秒57
10000m男子
日本記録:相澤 晃 27分18秒75(2020年) 10秒94更新
世界記録:ジョシュア チェプテゲイ 26分11秒00(2020年) 5秒47更新
その差1分7秒75
10000m女子
日本記録:新谷 仁美 30分20秒44(2020年) 28秒45更新
世界記録:アルマズ アヤナ 29分17秒45(2016年)
その差1分2秒99
マラソン男子
日本記録:鈴木 健吾 2時間4分56秒(2021年) 54秒更新
世界記録:エリウド キプチョゲ 2時間1分39秒(2018年)
その差3分17秒
マラソン女子
日本記録:野口 みずき 2時間19分12秒(2005年)
世界記録: ポーラ ラドクリフ 2時間15分25秒(2003年)
その差3分47秒
この差を見ても分かるように、5000mで200m以上、10000mで400m前後、マラソンでは1km以上タイム差から開けられる計算になる。
選手や指導者、陸連関係者達は言う。少しずつ、タイム差を詰めて行く必要があると。確かに、その考え方はあながち間違いではない。しかし、現実日本がタイムを詰めるのと同時に世界もタイムを詰めてくる。逆に、詰まってこない種目もあるくらいだ。
これだけの世界との差、トレーニングの根底から変えない限り差は埋まらない。
ポイントは小学生、中学生の指導、そしてトレーニング環境だと思う。
小さな頃から足の速い子は中長距離競技に流れる。能力の高い子達だと思う。しかし、小学生、中学生の育成は体の成長を考えた上での指導ではなく、高校生以降と同じように、スピード練習で小さいうちから出来上げてしまう。そうする事で将来可能性のある能力の器を広げる前に完成へと近づけてしまう。本来10まで上がる能力を8、9と。高い能力を持つ子を1人また1人と小学生のクラブチーム、中学生のクラブチームで潰しているのだ。
また、トレーニング環境も現状は悪い。水はけの良いアスファルト、ゴムのラバーで出来たトラックは一見走りを磨くには良い環境に思える。しかし、その環境では足を下ろすだけで地面からの反発は高い。そうなると、足へのダメージが大きく練習が追い込めない。そして、反発が高い分、少々フォームが崩れていようが力を使わなくても走れてしまうのだ。それでは、トレーニングとしての効果も弱くなってしまう。理想の環境は、芝生か赤土。走ってみたら分かると思うが、臀部や腸腰筋が張ってくるのが分かる。それが本来は使えなければいけない筋肉なのです。最近ではクロスカントリー走なども主流のトレーニングとなり良い傾向だと思いますが、更に一歩踏み込んで、芝生や赤土などの走る環境を確保して行きたい。
最後にですが、陸上競技の選手は他のスポーツに比べて海外のクラブチームでトレーニングに参加する選手が少ない。そう言うチャンスに恵まれないと言う事もあるでしょうが、もしそう言うチャンスに巡り合えたなら、積極的に参加して欲しい。
日本に閉じこもっていたら、世界は見えてこない。